風車



風車ふたつ並んで
風を電気に変えようと
プロペラ回す

風当たり強い
山の上

大柄な風情で
繊細な手作業

着膨れた雲
逆現象航路を行く

人間は何を知って
いるのでしょか





雲上






畑を歩むとは

雲上を歩むと

いうことだ

畑の底より

立ち上がる

世界





神保野原






牡丹の花だ
その上で
トライアングル薔薇
それらの上に
ほんわか月

トライアングル薔薇なリズム

牡丹なコーラス

ほんわか月なピアノ

夕映えな歌

なごんでいいか

なごんでいいさ

それじゃ

御言葉に甘えます






花と音楽






地下鉄の錆

軋む憶測

平和を撤去して広がる電気誤域

地下鉄風
未来階段
かけ上がると

温暖化ぶった看板
バーゲン世紀に並ぶ人々

立ち止まるふあんげ男女

ランドセルに楽譜

携えて並ぶ
ビル横に並ぶ
音楽のように

僕は英雄群の横に並ぶ
奴らに気づく群衆など
存在せず

僕は直接音楽の列に
話しかける




酒シャツ






畑では
1950年代の
ニューヨークで
話題にならなかった
長袖Tシャツを着ている
シャツには

酒の汗を畑に撒け

と書かれている
俺は酒を飲まずに
いられる法統な総督将軍






やっほう天気予報






群衆という書籍
都会という表紙

宣伝の如き洗練
人間に押し寄せてくる
呪縛

彼でさえ
七つ翼の
彼でさえ

救いを待っている

それらページを
飛ばして冬風
上機嫌なクルージング

おいら適度な
サイクリング
やっほう







ロック歌手






おいらロック歌手
衣装といえば
着流しステテコ

駅にコインロッカー
おいら自宅はそこで
駅雑踏の騒ぎを食事とす

そこで蓄電して
恵比寿アリーナで
パフォーマンス放電

宣伝せんで
おいらいっさい
宣伝せんで

宣伝せんのんに
おいら恵比寿アリーナ
ごった返し大盛況

犬のように騒いで
猫のように気まぐれよ

そんなお客に愛想笑い
ハイソサエティな
おいらロック歌手










ガジュマルのように立って
ずっと
海に向かう

パイナップル畑のように横たわり
ずっと
空に向かう

空に託した郷愁を
海に帰す頃

海と空を
労るように

夕陽がやさしく通りすぎる

やがて

僕はやすらぎの歌を

口笛で歌う

歌は星として
速度を増しながら

愛嬌ある国を遍歴する







でかい羽ばたき






下世話な規律など知らん

でかい翼で飛んでるだけだ

下世話な工作街が
でかい羽ばたきでポシャったなど知らん

でかい翼で飛んでるだけだ

下世話な騒音など知らん

待つなんて知らん

でかい翼で飛んでるだけだ

下世話な計画など知らん

でかい翼で飛んでるだけだ








千羽なラブソング






仕舞い忘れた階段を
ひとまず天に立てかけとく

留守にしていた部屋
冷えてたので呼んで

待った
千年待っただけで来た
早かったなと
讃えて抱いた

千羽なラブソング
部屋を温ませた






天の川






天の川流れ

豊かな音楽

問いを忘れるほど大きな答えの大河

ほんとの声を
聞きたい

ほんとの言葉が
欲しい

誰かの言葉ではなくて

きみの言葉が

欲しい

豊かな流れを覚えている

ともに流れてずっと

きみを抱きしめている







階段を






旅人よ
畑を
なぜ耕さない

旅人よ
お前の畑はどこだ

だが旅人よ
通り過ぎてく

積み上げられた
苦の石を

綺麗な趣だとかほざいて
旅人は通り過ぎる

通り過ぎてく

気を楽に
通り過ぎてく

苦の林を

異国情緒にして
くぐり抜ける


暑い夕暮れ
汗をたらして
階段を耕す
人がいる

階段を






静寂の賑わい






森の頭上を
飾る月

月の静寂

静寂の賑わいは



蝉たちは

月あらわれて
よりいっそうの

熱唱となる

森の賑わいは

命の歌







甘く美しい岸辺にて






謎の時間を噛む

ポケットを噛む

ポケットの小ギャグ
並べたりする

何百億悲しさを
並べて噛む

残さず
すべて噛む

甘く美しい岸辺にて









偶然






丘にフェンス
フェンスの上に

鳩が居る

ふと

鳩を飛び越える



その軽やかにして巧みな飛空

その後

フェンスから

羽ばたく鳩

それぞれの羽は

奔放を演じながら
システム駆動にて
力強く羽ばたく

このような
風景は

茶飯事ながら
街を堂々と超える

人間の意味の及ばぬ領域に

偶然の正しさあり








veranda dance






月の光は昔の祈り

未来の微笑み

ベランダにおいでよ

洗濯物に頭撫でられながら

ベランダにおいでよ

洗濯したてだからひんやりするけど

月の光で暖まりなよ

月の光を浴びて

背伸びして

もっと近く

もっと近くまで来て

暖まりなよ





森言葉






森を繁栄させる言葉として

蝶や鳥などがいる

他の動物も

森の言葉である

これらの言葉を使って森は種子を運ばせ繁栄していく

鳥は大昔
恐竜だったとの説がある

恐竜は
使われなくなった言葉である
流行らない言葉であるから

鳥という
より適した言葉へと変化したのだ

鳥はより遠くへ種子を運べる

はたして
森にとって
人間は使い続けるべき言葉なのか

人間は流行遅れの言葉になってしまったかもしれないのだ

だがとうぶんは大丈夫だ

「他の惑星に種子を運ぶ」

これこそ森の言葉なのだから






朱雀の心






なんと朱雀に
柔らかく飛空するよう
依頼したら
朱雀柔らかく答えて飛空

朱雀は柔らかい

朱雀はたくましい

街を飛空
併走すればたくましい
併走すれば柔らかい

大きな思惑

大きなおせっかい

朱雀は静かに羽ばたく

朱雀の羽に
くすぐられ
笑いながら併走






森フルーツ






森に自生する果実は
すっぱい
苦い渋い

小さな枯れ葉
などついている

果実はいびつ
いびつな野生果実を

森の奥でいただく

都会の高級フルーツ
糖度教育なフルーツ
凌駕する

かぶりつく
森で果実食えば
果汁は土を潤わせて

森にて見上げる虹

虹はきっと苦い






玄武の心






異常増加する非常扉

非常扉に貼る満員御礼

狭き通常通路側

素直な心霊の

発動により発展

龜の容量無限

すでに常に
正常な耐久

玄武から渡来する

暖かい友情







白虎の心






音楽に辿り着かない

グルーヴは訪れない

言葉は届かない

嘆きを咆哮に

渇きを走行に

彷徨を繰り返しながら

次元の謎を笑いながら

王道を駆ける

駆ける場所すべてを王道にして

荒野に街に響き渡る

白虎の心






万物屋






万物屋という店を開けたのは

早朝の風でした

風が店の扉を開けたのです

あれだけ
力自慢の男達が入れ替わり立ち替わり訪れて
万物屋の扉を開けようと長年挑戦し続けたというのに

あっさり開けたのは爽やかな風だったのです

万物屋のなかに人々は入りました

秘められた品々が陳列されているはずの扉の向こう側は

荒野でした

荒野の真っ只中で途方に暮れる人々

振り返ると

扉は閉まっていたということです

扉に書かれた

店の名前は

万物屋




菖蒲園



ガラシャツを着た男と薄笑いのマスクを被ったような男が

舞台の中央に
媚びるでもなく
ひねくれるでもなく
リズムよく出てきましたな

あれですよ

なんでげすかね

あいつの話です

ああ あいつね はいはい

あの
山のように大きなやつの話ですよ

おい おい ちょい ちょい
山のように大きなやつなんて
存在せんぜ 存在せんぜやんしょ?

こっちこそ おい おいだよ
話の流れってのを知らないのかおまえは

話の流れ知ってたら今頃 こんな汚い小屋じゃなくて
テレビで漫才やっとるわい えっへん

えっへん じゃないよおまえは 失礼なやつだなあ とにかく話の流れを汲み取ってテンポよくやりましょう

わかった わかった えっへん


じゃ 初めから…あいつの話ですよ
あの 川のように大きなやつの…

おい おい 話変わってるじゃないか

おや 話の流れを汲み取ってるじゃないかおまえは

もういいよ


この二人は今も小屋で頑張っているということでございます




青龍の心





花は白

階段は黒

紅の舟

青い希望

王の帰還に
万物が震える

白い知性

黒い力

紅の羽ばたき

旅する青き王

存在を超えた
大いなる愛を
まとう世界の
青き王の帰還に

玉座は称え

花は喜び

王を迎える

そしてまた
それぞれの旅





詩人






詩集なら街

詩集は
大きな書店に整列して
あなたが到着したならば
丁寧なお辞儀をしてくれるでしょう

新しい詩集のインクの匂い
上質な紙のやさしい手触り
あなたは高価な詩集に酔いしれるでしょう

でもあなたが
詩人をお探しなら

詩人は街にはいません

山の草の中を探してください
大きな石の裏を覗いたり
大きな木の枝に腰掛けたりしてください

きっと
そこに詩人がいますから






平凡な町






平凡に町は宇宙に
晒されている

宇宙に向かう
じゃない

宇宙を避ける

じゃない

平凡に町は宇宙に
晒されている

熟練の寂しさありて
帰路の鳩








羽ばたきを運ぶ






てっぺんの
心ぼそさに

雨に濡れながら
小鳥頷く

旅は小鳥そのもの

てっぺん揺らして
新しい羽ばたきを運ぶ
毎日ずっと






夕べ真詩






小さな船
大きなカーブを描く
帰路となって

ださい構造物に寄る

決まった夕べに
帰ってくる小さな船

微笑みのような
夕映え

ださい構造物に
精悍な夕映え

微笑みのような
夕映え







竪琴






きよらかな

歌を歌いたい
ずっと ずっと

きよらかな

踊りを踊りたい
ずっと ずっと

きみと